ニューカッスルファルコンズ 対 トヨタヴェルブリッツ

23日にテレビ観戦したのですが、いまだ興奮冷めやりません。ちょっとスポーツノンフィクション風に綴ってみます。

この日はあいにくの曇り空ながら、トヨタスタジアムの屋根は閉じられ、雨の心配は無かった。しかしこれから緑の雷撃が轟くことことを、予想しえた人は少なかったのではないか。今回来日したニューカッスルファルコンズは、ラグビーの本場・イングランドのプロリーグで中堅に位置するチーム。イングランドを始めとした強豪国の代表選手がスタメンに名を連ねている。三日前には、東京の国立競技場でNECを73対6と一蹴していた。NECは、調子を落としていたとはいえ昨年度の日本選手権で優勝していたのである。改めて海外との差を痛感し、トヨタにせめてもの善戦を期待したのは無理からぬところであった。好材料と言えば、ファルコンズは名古屋への移動も含め中二日での連戦、ピッチ上の湿度も高く疲労が増していたことくらいである。

試合はファルコンズの攻勢で始まった。体格やパワー任せでない正確なプレーでトヨタ陣に攻め込む。一方のトヨタは、すばやい出足でプレッシャーをかけてこれに対抗。日本のチームが格上の海外勢と伍して戦うには、まず相手の出足を止めることである。自由にプレーされては、体格とスキルに劣る側に勝機は無い。トヨタはCTBの難波・赤沼を中心に前へと出続け、粘り強いディフェンスを行った。だがやはりファルコンズはさすがである。ディフェンスの裏にキックパスを通し、WTBマシュー・タイトが先制のトライ。コンバージョンも決まって7点をリードされ、いやな予感が走った。先制パンチは、挑戦者にこそ必要なものなのに…
けれどもトヨタは怯むことなく、プレッシャーをかけ続けて相手の反則を誘う。SO廣瀬が正確無比なペナルティーゴールを三連続で決め、29分には7対9と逆転に成功した。すぐ後にペナルティーゴールを返されるが、前半も残り少ない時間にこの日最高のトライが生まれる。CTB赤沼がギャップを突きディフェンス二人を引きつけ、タックルされながらもWTBセコベにラストパス!これぞセンターというパスだった。セコベそのままインゴールへ飛び込み、10対14と再逆転する。このまま前半を終われるかと思ったものの、やはりそうは行かない。ハーフタイム直前、ファルコンズはゴール前で見事なグラバーキックを通し、結局17対14で折り返した。
後半、大事なのは立ち上がりである。ファルコンズに大敗したNECも、前半は健闘したが後半開始直後から突き放されてしまった。トヨタが二の舞にならないことを祈っていたら、なんと先制したのはトヨタ! WTB遠藤・セコベ・FBアイイの三人が見事なパスをつなぎ、タッチライン沿いを駆け上がる。セコベが2つ目のトライを決めた。この日の遠藤は、日本人にしては大柄ながらキレキレのステップを披露していた。
その後はガマンの時間帯が続く。後半13分までに、フォワードで獅子奮迅の活躍をしていた元オールブラックスの二人が退いた。アイイのドロップゴールで3点を追加するも、一瞬の隙を突かれて逆転のトライを許す。これで24対22。再びダメかの思いがよぎるが、アイイのスーパープレーが炸裂する。短く蹴ったボールが相手ディフェンスの裏に転がると、スピードを落とすことなく片手で!拾い上げ、50mを走って一気にトライラインへ。廣瀬のキックも決まって29対24と何度目かのリードを奪った。アイイは、ニュージーランドの7人制ラグビー代表選手。小柄ながら、すさまじいステップを踏む。真横にステップを切ったときなんか、残像が見えた気がした。まだ25歳なのに、よく日本に来てくれたよ〜。
ここからはもう気迫の戦い。お互いリザーブの選手を使いきり、一人の交代もできない状態に。トヨタは前半から気合のタックルを連発していた赤沼が足をつって倒れてしまう。解説の村上氏は「立ってるだけでもいい」と言っていて、ヒドイと思いながらも激しく同意してしまった。ラストの20分間は日本人だけになりながらしつこくタックルに行き、ついにノーサイド!! トヨタの大金星である。ラストの10分、ジャパンが毎度海外チームの底力に苦杯を舐めてきたことを考えると、感無量の瞬間であった。
点を取ったのは外国人を始めとするバックスリーだったが、それ以外の選手も最高だった。フォワードの8人は、平均体重で10kg近く劣りながらスクラムを必死に耐えた。ファルコンズフォワードは、平均すると身長190cm・体重113kgである。ラインアウトはキャプテンの北川を中心にほぼ完璧で、相手ボールも何度かターンオーバーしていた。麻田・廣瀬のハーフ団はすばやいパスと正確な判断で攻撃をリード。セコベ・アイイに変わって入った水野・久住の二人はよく反応して相手の突破を許さなかった。日本代表クラスのバックスが控えというのもどうかと思うけど(笑)
僕が今まで見た中で、2003年に早稲田がニュージーランド学生代表を破った試合以上のものがありました。今年はトヨタを応援することにします!

最後に、レフリーに敬意を。日本人初のフルタイムレフリーとして、この試合を裁いた平林氏。ゲームの流れを切らさない素晴らしい笛でした。